FEATURE 47 湧き出る気持ちを、ただ形に Fierce Feelings, New Wonders Featuring GRILLZ JEWELZ
スターリングシルバーでウォレットチェーンとバッジを制作した、GRILLZ JEWELZとWTAPSの二度目のコラボレーション。そこに垣間見られる職人としての技術や美意識、そしてものづくりへの終わらない追求。意外な縁から始まったジョイントワーク、はじまりのきっかけはGRILLZ JEWELZのショーケースの中にあった。
秋山哲哉(以下 秋山)「以前にWTAPSがSUPREMEとのコラボでつくっていたグリル型のインセンスバーナーを見て、すごく興味をひかれたのが僕がWTAPSを強く意識するようになったきっかけでした。グリル自体の形状もそうだし、はめておく模型の色や質感まであまりによくできていたから驚いて(笑)。普段からグリルをつくっている身からしても、ちゃんと本物を研究してつくられたんだろうなと。それを個人的に購入して自分のショップのショーケースに飾っていたんですよ。そのことを共通の知り合いを通してWTAPSのスタッフが知ってくれたみたいで、展示会に呼んでいただいたんです。それが最初でした」
秋山:「そこから一緒にものづくりをしてみようとなったんですが、話を重ねていくうちにこれは面白そうなものができそうだなと思えました。自分はデザイナーではなく、どちらかと言うと職人タイプなんでイチからデザインをするよりもつくることのほうが得意ですし、アイデアにはきっかけだとかヒントが要るんです。だから、WTAPSっていうブランドのテイストをヒントにしてジュエリーをつくるっていうことにすごく意味を感じました。ただ『この通りのものをつくってくれ』というんじゃなく、キーワードをいただいてからはちゃんと自分の解釈の余地も残してくれていて、想像しながら広げていけたのが楽しかったですね」
WTAPSがニューヨークのコミュニティと親交を深めていった’90年代、現地にクルーが足を運んだ際にはグリルなどを扱うジュエリーストアを覗くことが多々あった。GRILLZ JEWELZが現代の日本で体現しているスタイルは、そんな当時のムードを彷彿とさせるもの。
秋山:「僕は自分でグリルをつくるようになる前、女性用のジュエリーを多く手がける工房にいました。彫金や宝石の加工の技術はそこで学んだんですが、そこの社長がよく言っていたのが『まず目を養え』っていうことで。本当にきれいに仕上がっていたら感じないような違和感に気づけるようになれ、それがわかる目を養えと。はじめはその意味がわからなかったけど、何年もやってるうちに自分でもそれが理解できるようになりました。そこで培った自分の見る目を信用しているし、常に見落とさないようにと心がけています。それが今もGRILLZ JEWELZの、自分のものづくりの品質の基準になってると思います」
秋山:「今でこそグリルをアイドルの人が身につけたりすることも珍しくなくなりましたよね。広まっていくこと自体は決して悪いことばかりじゃないですけど、僕自身のバックグラウンドにあるのはヒップホップだし、それをずっと貫いているつもりです。逆にウォレットチェーンっていうアイテムはちょっと前まで僕らの感覚では選択肢にあまり入ってこなかったけど、今はUSのラッパーを見ていても普通に取り入れるものになった。そういう意味でも旬というか、現代らしいアイテムですよね。ベースはマイアミキューバンリンクっていう日本で言うところの喜平に近い形で、アメリカではベーシックで人気のあるチェーンです。それでウォレットチェーンをつくったら面白いんじゃないかと思って、僕から提案させてもらいました」
ウォレットチェーンは本体から両端のクリップに至るまで、すべてを形状から設計したオリジナル。重厚さは持たせつつ、50cmという汎用性の高い長さに設定している。コマにはWTAPSのロゴを刻んだものが等間隔で入る。
秋山:「もうひとつのバッジは、実はもともと『シルバーでカンバッジをやるのはどう?』という話だったんです。正直、そんなのつくれるのかな? というのが最初の印象だったけど、実際にサンプルをつくっていくうちにすごく可愛いと思えるフォルムになってきて最終的にこの形になりました。そもそもがあまり聞いたことのないリファレンスでチャレンジでもありました。そうやって実際につくってみて初めてわかることはたくさんあるし、自分だけじゃ出てこないようなひらめきがあったから、つくっていて本当に楽しかったです」
バッジは表裏がともに丸く盛り上がった両凸レンズ形で、そこにWTAPSのイニシャルロゴを冠した立体的なデザイン。このフォルムはアメリカのソフトキャンディが着想源になっている。
秋山:「独学でグリル制作を始めて、ジュエリーをつくるようになってもう20年以上経ちました。オジロザウルスの『MABOROSI』という曲があるんですけど、それは自分が思い描いている幻をずっと追いかけてる…というような内容で。“どいつが誰でもどうでもいいけど 言葉の紡ぎ方 韻の踏み方 リリックの書き方なんて忘れた”と歌詞で言っていて、たぶんそれってラップを書いてつくるっていう感覚ではもうなくなって、湧き出てくるものを音楽にしてるというような意味だと思うんです。今になってこの曲のリリックがすごく刺さります。僕も今は自分の内側にあるイメージをただただ具現化しているような、そんな感覚なんです」
秋山哲哉
1976年生まれ。ジュエリー工房で技術を習得したのちに独学でグリル制作を開始し、2005年に自身のショップ、グリルズジュエルズをオープン。そのクリエイションが支持を集め、現在はヒップホップアーティストをはじめとするオーダー希望者が世界各国から東京・御徒町の店舗へ足を運んでいる。
Photograph_Tsutomu Murofushi
Interview&Text_Rui Konno
Interview&Text_Rui Konno